同会社の所有する土地は、主に渥美郡牟呂吉田村に於ける神野新田で、その小作人保護策に農事奨励のための施設する事業の中、見るべきものは多く、その状況および方法は次のようになっている。
▲ 神野新田農事試験場
明治39年より該新田の中央に試験場を設立し、農作物全部に渡り該新田に適するか否かを試験し、もしくは肥料耕作方法を調査し、同時に模範作田を作り小作人に示しつつある。
▲ 神野新田信用組合
明治31年より勤倹貯蓄組合を設け小作人の貯蓄奨励を実施したが、35年の産業組合法により信用組合を組織し、以来組合事業の発展を画策すると共に貯蓄を奨励し、小作人の資金運用と相互救済の目的を実行をしつつあり。
▲ 高齢者保護方法
小作人の高齢者を保護し、時に壮年者に対し年長者を尊敬する美風を養成するため、70歳以上、80歳以上、90歳以上、百歳以上と区別し各保護金を養老金と称し、これを惠与した。
▲ 講事の設備
信用組合の設立日より間もなく資金の運用が十分でないため、牧畜講を設け耕耘に使用の牛馬の買入資金の運用とし、船講を設け作物運搬および海藻その他天然肥料の採取するために小舟買入または改造の資金に充てて、地主はこの講事の取締りに付いては厳重な監督をしつつあり。
▲ 小作人心得書、農事奨励法
明治27年、神野新田開拓以来、農事奨励もしくは産米改良等、種々の方法を施設して来たが、明治39年8月に次の奨励法を設定し、これにより農事を奨励しつつある。
以来、日数が浅くて効果は著しくはないが、堆積肥料奨励のように大いに見るべきものがある。
小作人心得書
(一) 事務取扱方 事務所は数百人の小作人その他が相手で色々な取引がありますので、偏頗のな
い ように取扱っておりますが、これからは農事奨励法が色々でき、また改良する事なども沢
山ありますから、増々「エコヒイキ」なく、また規則を堅く行いますから、皆さんはこの心
得書にある事や当事務所より話した事に間違わぬよう注意しなさい。
わずかの不注意で皆さんの損になる事があります。
(二) 事務 は毎日取扱いますが、格別急ぐ用事の外は毎月1日、11日、21日か雨の降る日におい
でなさい。 その日は大概、各事務員がおります。
(三) 勘定払日 毎月1日、11日、21日の外は支払い、または貸付しません。
(四) 肥料金 は毎年4月中にその年度内に各自借入れる金額を申出なさい。
諸氏の小作反別と信用により相談の上定め、約定証に保証人二名の加判をして差入れすれば
入用の時は帳面と実印を持参すれば貸します。 この約定の金高の外に借入たい人は入用の
道を申出相談の上、別の証書に保証人2名の加判がいります。 約定の金でも中途に不信用の
事をしたり、または小作人の心得書にそむきたる人には金を貸しません。
(五) 撰種 籾種は毎年4月20日より30日までの間に、麦種は12月10日より30日までに苦塩撰種を
しなければなりません。 その時には当事務所から立合います。
(六) 苗代 は規定および奨励法により共同して作らないといけません。 共同以外の苗代には色々
の特別扱いや褒美を受ける事は出来ません。
(七) 田植 は毎年旧6月「チウ」3日前より「ハンゲ」3日下りまでに植付の日割をして告示します
から、その日限中に植付しないと不作でも定免よりひききません。 字々の日割に植付をしな
いと用水をかける事ができない時がありますので、なるべく日割に植付なさい。 田の縄張は
なるべく田の縦にするべし。 田の縄張もしない人は不作でも定免よりひきません。
(八) 畦 今年から地界には必ず畦をつく事にしましたから旧冬中に作りなさい。 畝の巾は地界を
中心として巾1尺、高さ5、6寸位とする。 初めて畦をつく時は雨方にて半分づつ、作りなさ
い。 例えば20間の地界には一方にて10間件づつ作りなさい。 畦の無い田に裏作をする人は
半分畦をつき、残りの半分分は畦土を残し置きなさい。 畦の草は互いになるだけ奇麗に刈り
隣の地の迷惑にならないようにしなさい。
(九) 草除 田の草は植付の日割後20日目に1度、それより10日目毎に3度、および秋草を2度見廻り
ますので、3度目以上草取が悪い田は不作でも定免よりひききません。
取草は道や畦へ上げる事は堅く禁じます。 この草を田の中へ踏込むと田肥になります。
もし、踏込むと悪い草があれば家へ運んで堆肥にしなさい。
(十) 浮塵子駆除 浮塵子(ウンカ)は2番草3三番草の時分には、1株に大概2、3、4匹位おりますので、
その頃に除虫液にて駆除すれば手数も楽で油も沢山要りません。 土用明頃に浮塵子が増えま
したら2度目の駆除をしなさい。 もし、その時に駆除の知らせをしても駆除せぬ人は不作でも
定免より引きません。 用水その他の都合で、あるいは区域だけ共同駆除することがあります。
その費用は反別に割付ますので支払うべし。
(十一)道 作道や、または車道のふちに豆を植える事は今年より差止ます。 作道を削り畑沿いの道
を狭めぬよう注意しなさい。 もし道へ作物をしたら荒らされても苦情は言えません。
用悪水の堤防や道端にある木の枝は、9月中に作地続きの人が幹を痛めぬように切り、薪や堆肥
にすべし。 立木は「ハザカケ」に使っても差支えありません。
(十二)稲の種類届 毎年各々の作地稲の種類を10月15日迄に1筆毎に口頭にて届けなさい。
(十三)小作掟米 は毎年12月10日までに日割を知らせますから間違わぬよう、当事務所へ、または
指図した所へ納めなさい。 掟米に次の米は納まりませんので持参しても取替させます。
一 2番挽や3番挽を混ぜた米
一 乾燥が悪くて虫害の憂いがある米
一 外皮が古俵であるか、また内皮が新藁の俵であるとき
一 不動縄が規定通り掛かってない俵
一 籾が一サシに4粒以上あるか、または碎米や粉米のある米
(十四)引方 汐出のために不作の人は毎年10月15日迄に届け出なさい。 検見の上、引き方いたし
ます。 期日までに申出ないと引き方しません。 今年より不耕作のため不作の田は引き方し
ませんので、なるべく丹精して作りなさい。 多勢不作引き方のため寄合いをして、または
引方勘弁に付き、大勢当事務所へ脅迫がましき願い出等は堅く禁じます。
もし一般の人に引き方をしても、この決まりに反く人は定免より引きません。
(十五)農事奨励 堆肥緑肥奨励法、共同苗代規定および奨励法、小作米改良奨励法、正條植奨励、
かまどの改良奨励、競作試験、肥料試験法等を定め、本年から行いますので奨励の趣旨に従いな
るだけ丹精して下さい。 追々時宜に応じてなお、改良の方法を告示します。
(十六)農事試験場 試験場は農事の改良をする方法の研究と、また諸氏に見せるために当事務所が
沢山の費用を使って模範田、1坪の株数試験、肥料試験、種類試験、肥料施用季試験をいた
し、そのほか畑作物の試験も追々いたしますから皆さんは折々見廻りにおいでなさい。
不審の事はいつでも試験場員が詳しく話してあげます。
堆肥緑肥奨励法
当新田は開拓をしてから13年になりますが、まだ7、8年前迄は汐気のあるのでコメの収穫できない田が多くありましたが、最近は大概汐枯をしない様になった。
そのかわり塩分の作用のために海の時の肥は残らず吸い上げられたため、ここ2、3年は純粋の無肥料地となりました。
これから皆さんの丹精で追々土地の力ができ、米の収穫も増す時代になりました。
しかし金肥(金を出して買う肥料)は年々高くなり、また1年毎に増して入れないと効能が見えませんので、米を沢山収穫しても勘定に合わないようになります。
それなので金のかからない肥を作り、その補助に金肥を使うしか致し方ありません。
この度、金のかからない堆肥や緑肥を栽培する奨励法を設けて、3年間続けていろいろ皆さんに補助しますから、なるだけ勉強して下さい。
したがって当新田に居住の小作は外々と違い作地が割合に多いですから、とても堆肥では出来ない人もあります。
そのため堆肥の足らない所には緑肥を入れるのです。
紫雲英を作れば1反歩に出来た紫雲英が上出来ならば3反歩、中位でも2反歩の肥にはなります。
また足りない所には藁の外を積み、1番打ち込みの前に振って鋤込むようにして、なるべく金肥がいらない工夫をしなさい。
堆肥、緑肥、泥肥などは、その年に効く、残りが2割位はありますが、その年に効くだけの金肥に比べると、骨折りを勘定しても余程安くつきます。
堆肥及び堆積肥料小屋建設補助
一 堆肥を作る人には毎年5月と10月に届け出しだい検査して、千貫目に(藁なら凡そ百束位)
金二円づつ補助します。 だし、出来工合により補助の金に差があります。
一 堆肥小屋を新しく建てる人には木、竹、瓦の代金を作り方により、三年より七年迄の間に
返金する無利息年済法にて貸します。
一 金を借りた人は借金15円につき堆肥千貫目づつ積まねばなりません。
積まない人は年一割の利息を取ります
一 金を借りた人には普通の半額を補助します。
附り
一 新田に居住しない人は新田の中に小屋のある人に限り補助します、また新田の中に小屋を
建てる人には金を貸します。
緑肥栽培補助
一 田の裏作に紫雲英、青刈大豆を作る人には蒔付る種を上げます。
一 紫雲英を作る田の肥料として蒔場1反歩に金1円50銭、またはその代金に当たる肥料補助を
します。
一 青刈大豆を麦作の無い田に作る人には蒔場1反歩に70銭、またはその代金に当たる肥を補助
します。 麦の間作に作る田には肥料は補助しません。
一 補助の肥料を入れる時は当事務所より立ち会いますので、その2、3日前に肥料の金品を受け
取りに来て、施肥の日時を申し出なさい。
一 紫雲英を作る人は8月中に、青刈大豆を作る人は2月中にその田の字番と反別を申し出なさい。
一 紫雲英を作る人の内、丹精の人を選び賞与を上げます。
附り
一 小麦を裏作に作ることは田の植え付け耕作が遅れますので、今年よりはなるべく止めること。
小麦の間作には青刈大豆の種はあげません。
栽培法
一 紫雲英
(一)種蒔 は秋彼岸より15日位の内、1反歩に3升位を蒔付けること。
(二)蒔法 は稲の穂首がたれてから水を干して1、2日間を置き、種を
一晩水に入れて膨らまし、藁灰と混ぜて蒔けば量が増えて
蒔くに楽で、また芽をよくきります。
(三)作方 蒔付をしてからは必ず水を引き入れてはいけません。また
稲を刈ったら直ちに雨水が溜まらないよう、左図のようにし
て抜けを掘り、水落ちをよくする必要があります。なお11
月中に霜よけのために藁2、3拾束を三切にして振りなさい。
(四)肥料 1反歩に付き、過燐酸5貫目、藁灰15貫目位、人糞尿4、5荷、
藁灰は藁をふる前に朝露が葉にない時に振りなさい。 この
時に堆肥か土肥を混ぜて振れば、なお良いです。 糞尿に3月
中頃(彼岸前)5、6倍にのばした過燐酸を入れてかけなさい。
(五)刈時 刈時は花の盛が良いです、日和を見て1、2日乾かして「押切」 にて6寸位づつ切り、直に鋤込むこと。
一 青刈大豆
(一)種蒔 麦作の無い畝には春の彼岸入前後に、麦の間作には彼岸過ぎより20日間位の内に
蒔付けること。
(二)蒔法 麦の畝に沿って凡そ1尺間に孔を明け種を4、5粒づつ入れ、田土と堆肥か、または
藁灰を混ぜて孔を埋めること。
(三)肥料 種蒔の時に堆肥を少しづつ入れ、芽を出してから過燐酸を蒔場1反歩に5貫目位施
すこと。
(四)刈時 麦を刈ってから少なくとも一週間くらい過ぎて、根こぎする日和に1、2日乾かして
鋤込むこと。
野外堆肥補助
一 藁と土とを外に積み堆肥として田に入れる人には、藁10束に付き掟米1枡(20束であれば2枡)を
定免より引きます。 その上、肥泥の乗賃として土1坪に金70銭宛補助します。
(一) 泥土は春夏の中に法土して、田のそばに乾かして冬の寒気に当てて2、3月頃に藁をはさんで
積みなさい。
(二) 積み場は田より高い所にして、なるべく杭を打ち菰か藁にて囲いなさい。
(三) 切り返しをするときには、米糠または麦糠などを入れましたら上等です。
(四) 1番積みのままで切り返しができない人は、泥土をたくさん使わないとイキリ(発酵?)が
強すぎて肥料分が逃げます。
(五) 田に振るには水の無い時にして、直ちに漉き込むこと。 入れたままにして置くと幾分か肥料
が流れます。
弓道苗代規定、および奨励法
苗代は農業の技術として、また農家の最も大切な作物であります。 苗の太い細いと長い短い戸を揃え、良い加減の育ちに作ることは、なかなか難しいことである。 また苗の出来が不十分なときは、収穫に大変な異常があり、はなはだしい時は汐気のある所や水被りがする所は、ほとんどが枯れたり腐ったりして、収穫が皆無な事が時々あります。 誠に苗代を作ることは皆さんが第一に注意しなければなりません。 そのため、今度当事務所に於いて共同苗代の定めを設け、各組々共同して苗代の改良をすることに致しました。 そのため、この規定に記載してないことは組々で定めを作り、決して我がままな事はしないように互いに補い合って、改良ができるように努めなさい。
一に苗、二には肥やし、三 手入れ、四に虫を取れば、いつも豊年
(一) 共同苗代は一区の内、一号地以上に限ります。
(二) 一組毎に正副2人の管理人を置くこと。
(三) 苗代地拵(ジゴシラエ)へから苗代跡の肥入れ、および田の耕作までの一切は管理人の指図に
従いなさい。
(四) 苗代の堆肥は一カ所に共同して積み、その原料は反別により割り付けなさい。
(五) 苗代の金肥は特別に当事務所より、年6朱の利息で貸しますから、管理人より申し出なさい。
(六) 苗代の虫取りに2度、テントウ虫は3度、除虫液駆除は1度、以上を実施しなさい。
(七) 灌漑排水などは管理人にて実施し、その他の仕事は管理人の指図により、めいめいが行い
なさい。
(八) 管理人の報酬は反別によります、費用の割り付け方法などは各組々で定めなさい。
(九) 共同苗代は審査の上、丹精の組に(各区に2組位)褒賞をあげます。 ただし、反別と人数に
より褒賞の差があます。
(十) 苗の植え付け後の比較試験をしますので、各組より苗を30杷ずつ、6月24日に当事務所の試験
場まで持参しなさい。
注 意
一 苗代の共同堆肥をする小屋の竹、木、瓦、は補助します。
小作掟米改良奨励法
当新田は新開地ですが砂質壌土であり、しかも早田ですから産米の原質は善良になるはずである。 その上に数年小作米品評会を催して米質の改良を奨励し、皆さんが熱心に改良してきたため追々宜しくなりましたが、その乾燥に至っては未だ他の産米に及びません。 特に最近の3年で俵装の方法が大きく悪くなり、酷いのは古俵を使いますから、これを市場に出す時は俵の造り直しをしなくてはなりません。 その外改良すべきことがたくさんありますので、今回掟米の改良の奨励法を改正したので、皆さんはよくこの方法を読んで増々改良されるよう望みます。
乾 燥
一 乾燥を十分にしない米は色々と損があります。 その2、3の例を記します。
第一 夏まで蓄えて置きますと虫が湧いて、8,9月頃には1俵で1升位、ひどい場合は2升の桝減り
します。
第二 臼摺の時、碎米や粉米がたくさんできて米の収穫が減ります。 この損はなかなか大した
ものであります。
第三 臼摺して米と籾を別けるには大変今がかかります。 その上充分に別けることができま
せんので揺り箱で揺らねばなりません。 乾きが良ければ千石でも万石でも立派に出来
上がります。
第四 米の光沢が無いと米粒に胴擦れがして、米の品質が大変悪くなります。
以上の損はなかなか小さくありませんので、皆さんは注意して次の方法により乾燥しなさい。 乾燥の悪い米は掟米としては納められません。 もし納められても割増米を取り立てます。
一 ハザ掛け 稲を刈り取ると直ちにハザ掛けをします。 日和続きであれば1週間位、雨天があれば
10日間位かけて扱落(コキオトス)こと。 ハザ掛けの杭や丸太は早苗、中苗、晩苗と順番に使
えばたくさんは要らない。
一 ムシロ干し ハザ掛けした稲は1日か2日、もしくはハザ掛けしてない稲は必ず三日干しにして、
一昼夜位籾にムシロを着せて寝かした上で臼摺しなさい。
調 整
一 籾抜き 籾の多い米は白米につき上げても十分に籾が取れず、食
するのに困りますので、米1挿しに4粒より多いものは掟米に納ま
りません。
一 碎米や粉米抜き 碎米や粉米は多く米に入っていても、桝量は増え
ませんので、充分「トウミ」か粉米通しにて抜けば、それだけ利益
です。 その上、碎米や粉米があると米質が悪く見えます。
一 2番挽や3番挽の米を混ぜますと掟米に納まりません。
俵 装
一 米の俵装が悪いと中の米が悪く思えます。 古いことわざに「馬子
にも衣装」と申しますので、俵装を良くしなければなりません。
特に当新田は所々より移住して来た人ですから、各自が手慣れた
造り方で一定しておらず、運搬や扱いに困りますので、この度俵の
拵え方(こしらえ方)を定めました。
(一)外皮 は新俵を用いること(なるべく古藁が良い)、古皮は納ま
りません。
(二)内皮 は古藁俵を用いること(古俵でも良い)、新藁俵は納まりません。
(三)俵の編み方 は上の図の寸法で造ること。
(四)横縄 は二重に掛けて内外とも5ケ所結びとすること。
(五)不動縄 は俵を十字型に掛け、横縄1ケ所に4ケ所、総体12ケ所掛け、横縄が動かないように
すること。
(六)縄の太さ は横縄は径2分5厘以上、不動縄は径4分以上とし、おしなべてスリ縄とすること
(内皮〆の縄は並みの物でもよい)
この規定に反する俵は納まりません。
一 端米 端米を納める時は、必ず次の定めを注意して持参すること。
1斗5升以上 内皮1枚
2斗5升以上 内皮外皮共2枚
3斗5升以上 内皮外皮の外に縄共
賞 罰
これまでの小作米品評会審査の方法を改めて掟米を納める時、1俵毎に米質と俵装とを審査し賞罰を行います。
(一) 1等より3等までを合格米とし、1等と2等に賞米を与えます。
1等 賞米 1俵に付き米7合
2等 賞米 1俵に付き米3合
(二) 4等、5等を不合格米とし、割増米を取り立てます。
4等 割増米 1俵に付き米2合
5等 割増米 1俵に付き米5合
(三) 賞与米は翌年の掟米を納める時に渡します。
(四) 賞与米や福引のクジ札を受けるべき人は、当事務所割り通知した日限に収めた人に限り
ます。 その他の日に持参した米には賞与は出しません。
(五) 賞与米の外に1、2、3等米には次の俵数によりクジ札を渡し、旧正月の3日にクジ引きを
して福引を致します。
一、3俵より5俵まで 札1枚
一、5俵以上毎に 札1枚
(六) 福引には女の欲しがる物をあげるから、その日には是非主婦がおいでなさい。 時間は
午前10時から始めます。
(七) 1等は上等の絹反物より順番にて、空クジは1本もありません。
(八) 割増米は掟米を納める時に取り立て、その米にてハザ掛け用の丸太か、その外改良米の
農具を買い入れ、割増米を納める人に貸します。 この農具は5ケ年間保管して使用させ
た後、その人に与えます。
(九) 俵を編む道具は皆さんが持参すれば、定めの寸法に直してあげます。
(十) ハザ掛けの丸太は無賃で貸します。 皆さんが保管して翌年9月に当事務所より調べまし
た時、不足の分は代金を取り立てます。
注 意
一 俵装の見本として1俵づつ各区長の宅に備えますから、よく見てその様に造ってください。
一 ハザ掛けの丸太を無賃で貸すことは新田の住民に限ります。
農事各種奨励法
一 正條植奨励 田植を定規植にして1坪に42株以上植る人には、1反歩に付き金15銭づつ補助します。
(一) 定規植は1,2年手間取りますが、馴れれば格別手間取りません。
(二) 定規植すると風通りが良く、根本へ良く日が当たります。
(三) 定規植すると田の草取りに器械が使えますのと、手取でも捗り得があります。
一 かまどの改良奨励 改良かまどを築く人にはレンガ、サナと、かまど築職人を補助します。
改良かまどに使う薪の購入代金に貸せる金は1円に月5厘の利息より取りません。
(一) 改良かまどを築来て堆肥の原料にする藁や麦殻を、なるだけ焚かない(タカナイ)様に
しなさい。
(二) 改良かまどは普通のかまどより、焚物が4割から2割位減らせます。
(三) 改良かまどは2つ焚けば3つの釜が煮えます。
一 競作試験
(一) 1場所3反歩を10人に分けて、1人に3畝歩づつ作らせます。
(二) 1場所毎に審査して丹精の人、3名に褒美をあげます。
(三) 賞与は1等に米半俵、2等に米1斗、3等に米5升まであげます。
一 肥料試験
(一) 1区内にて皆さんの内から正直にして、しかも農事に丹精の人を1めいづつ選び、その人に
肥料試験をさせます。
(二) 試験田は12反歩に10種類位づつ作らせます。 その肥料は当事務所より補助します。
(三) 試験田は折々、皆さんが見回わって、翌年の稲作をする参考にしなさい。
引用元
タイトル 地主ト小作人 神野富田殖産合名会社の施設
著者 農商務省農務局 150~164頁
出版者 農商務省農務局 書籍へのリンク
出版年月日 大正5年 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1172814/87 コマ87/148